本会の趣旨について
2017年4月 丹羽経済塾会長 (前衆議院議員、東京大学大学院客員教授、元財務省)
松田 学
日本経済は安倍政権のもと、長年にわたるデフレからようやく脱しつつあるようにみえますが、未だ、その潜在力に見合った持続的な成長軌道に乗るには程遠い状況です。
今後長期にわたり、少子化・超高齢化、人口減少の影響が続いていく中で、現状では、力強い経済成長と財政の持続可能性の確保を両立させる道を見出すことは至難の業です。従来型の財政金融政策の枠組みを超えた、新たな経済政策の体系を構築できるかどうかが問われていると考えます。
こうした問題意識のもと、これまでの常識にとらわれずに、今後のあるべき経済政策について自由な議論を行い、これを具体的な政策へと実現させていくことを目的に、2017年3月、「丹羽経済塾~新財源システムを提案する会~」がスタートしました。
この会を設立する契機となったのは、2016年末、丹羽春喜・大阪学院大学名誉教授が他界されたことでした。丹羽先生は、日本経済の再生のため、新たなる財政財源論を学界や論壇、あるいは政策当局に真摯に提起し続けるなど、数多くの偉業を成し遂げてこられました。そして、丹羽先生を慕う多くの方々が参加し、先生のご指導のもとに定期的に勉強会を開催する形で長年にわたって営まれてきたのが丹羽経済塾でした。奥様のご了解を得て、その名称を継続する形で先生のご遺志を引き継ぎ、政策論のさらなる充実、発展を期すべく、有志が集い、丹羽政経塾を再出発させることになったものです。
本勉強会では、丹羽先生が探求されてこられたマクロ経済政策や積極財政論の基本的考え方を受け継ぎつつ、日本の経済や財政の行き詰まった状況を打破する新規の財政財源の仕組みの構築を中心に、できるだけ多くの皆さまのご参加を得て、議論や研究に英知を集めていきたいと考えております。
その上で大事なのは、議論を単なる議論に終わらせず、実際の経済政策に反映され得るような提案へとまとめ、日本の現実の政策実行へとつなげていくことです。
幹事の皆さまからのご推挙で、私、松田学が図らずも会長に就任することとなりました。私は大学で経済学を学んだあと、大蔵省(現財務省)に入省し、その後、ドイツでも経済学を研究いたしましたが、霞ヶ関では長らく、マクロ経済政策の立案や調整などに携わってきました。また、その一方で、大学や各種のシンクタンク、NPOなどの場でも政策論形成の活動に広く携わりました。いくつかの著書の中には、財政財源のあり方を論じたものとして「永久国債の研究」(共著)もあります。
加えて、国政の場でも、衆議院議員として、国会審議や政党の政策立案など、具体的な政策論を積み重ね、世に発信し、政府に提案するなど、さまざまな経験をさせていただきました。国会議員当時は、丹羽先生から格別のご薫陶を賜り、現実の経済財政政策に先生のお考えをどう反映すべきかを考え続けておりました。
故・丹羽先生とは比べるべくもない、はなはだ不十分な知見しか持ち合わせておりませんが、こうした政策現場も含めた経験なども活かしながら、顧問に就任された宇田信一郎さんとともに、メンバーの方々のお力添えを得ながら、上記の趣旨の実現に向けて、皆さまのご期待に少しでも応えてまいりたいと考えております。
いまや、日本の財政金融は、先進国最悪の財政状態という意味でも、異次元金融緩和のもとで進んでいるマネタイゼーション(政府債務の貨幣化)の規模の面でも、人類未到の地に到達しているといえます。需要面では、将来の不確実性のもとに消費も投資も日本経済の実力を大きく下回る低迷状態が続き、供給面では、潜在成長力の低下が顕著です。
この中で財政の持続可能性を確保していくためには、増税や歳出削減、あるいは経済成長頼みといった従来型の対応を超えた新しい知恵、システムが不可欠になっています。もしかすると、ケインズ革命以来ともいえるような、革命的な新機軸、新領域を経済政策に切り拓くことが問われているのかもしれません。
まさに日本が「課題先進国」であることは、マクロ経済政策の面でもいえる状況です。事態打開のためには、経済社会システムや貨幣論などの本質に立ち返った本格的な議論や考察も必要になってくると思われます。
これらも含め、丹羽先生が唱えた「威風堂々たる」日本経済への進路を確かなものにし、人類社会に新しい繁栄への道を切り拓いていくべく、これまでにはない知恵と政策論を皆さまとともに議論し、世に問いながら、日本の政策のバージョンアップを期していきたいと考えております。
できるだけ自由で楽しい議論と交流の場にしていきたいと思います。
ともに、新たな良き国づくりへ、皆さまのご賛同、ご協力、そして、ご参加を、心よりお願い申し上げます。
<松田学プロフィール>
1981年東京大学経済学部卒、同年、大蔵省(現財務省)入省、西ドイツ留学、本省・霞が関では経済、財政、国際金融、金融行政など、地方勤務では国税・税関など幅広い職務を経験、内閣審議官、財務省本省課長、東京医科歯科大学教授、郵貯・簡保管理機構理事等を経て、2010年政界進出のため退官。2012年衆議院議員に当選、衆議院内閣委員会理事、日本維の会国会議員団副幹事長、次世代の党政調会長代理等を歴任。国家再建に身を捧げようとの思いから財務省在職中より言論NPOの設立など日本の政策論の場づくりに邁進。官民政学各界との間で築き上げたネットワークで課題解決! 著書は『国力倍増論』、『ニッポン興国論』、『TPP興国論』、『永久国債の研究』(共著)、『競争も平等も超えて』など多数。
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